自筆証書遺言書保管制度|上手に活用して遺言の不安を減らそう!

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自筆証書遺言書保管制度|上手に活用して遺言の不安を減らそう!

最近よく聞くようになった「終活」。
一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

遺言書を書くほどの財産は、自分には無いなんて思っていませんか?

遺言書を書いたなんて家族に伝えたら、思わぬ騒動になるなんて思っていませんか?

遺言書を書くことで実現できること、避けられること、メリットも多くあります。
自分で書くことができる自筆証書遺言。今回はその自筆証書遺言の保管制度について詳しく解説していきます。

自筆証書遺言って?

遺言にはいくつかの種類があります。自筆証書遺言はその中のひとつです。

遺言書の種類

遺言書を作成する人を「遺言者」といい、遺言により財産をもらい受ける人を「受遺者」といいます。
自筆証書遺言は遺言者が全文を自書(自分自身で書くこと)しなければいけません。日付、氏名、押印も必須です。

(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

【民法 第968条】

遺言書に多数の財産について記載する場合には、財産目録を添付することも可能です。この財産目録は、自書である必要はありません。形式も自由なので、例えば、不動産の登記事項証明書をそのまま財産目録とすることも、パソコンで作成した一覧を財産目録にしても構いません。

遺言書に添付する財産目録には1枚ごとに遺言者が署名押印しなければなりません。また、規定はありませんが、遺言書と財産目録が一体であることがわかるように、綴じて契印しておくのが望ましいでしょう。

遺言書の綴じ方
遺言書の綴じ方

このように、自筆証書遺言は、思い立ったら比較的、容易に作成することができるのが最大のメリットです。他の遺言に比べ、費用も時間もかかりません。

自筆で作成した遺言書は、しっかりと保管しておきましょう。
作成した事実や、保管場所を推定相続人に伝えておくことも重要です。

相続人や受遺者(遺贈を受ける人)が遺言書の存在を知らなければ、その遺言書は意味を成しません。保管場所を忘れてしまっても同じです。ときには破棄されてしまうことがあるかもしれません。
このようなリスクが自筆証書遺言のデメリットでもあります。
その他のデメリットとしては、要件不備で遺言内容が実現されないことが挙げられます。自筆証書遺言を作成するときは、専門家にチェックを依頼すると安心ですね。

どうして遺言を書いた方がいいの?

自分が亡くなったあと、誰が相続人になるか把握していますか?

相続人になる予定の人を「推定相続人」といいます。

推定相続人は互いに連絡を取り合っていて良好な関係を築いていますか?
自分が亡くなった後、その財産をめぐって意見が対立するような心配はありませんか?
不動産など、分ける(分割する)ことが容易ではない財産が大部分を占めていたりしませんか?

遺言書の作成を勧めると、よく「そんな大した財産なんてないから」と言う人がいます。
令和4年の司法統計を見ると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち、話がまとまった(認容・調停成立)件数6915件のうち5276件(76.3%)は遺産価額5000万円以下です。
そのうち、1000万円以下の件数は2322件で33.6%になります。(2954件42.7%は1000万円超5000万円以下)

遺産分割調停グラフ
遺産分割調停表

この数字を見ると、財産が多くないからといって揉めることがない、とは言えません。
ちなみに、家庭裁判所に持ち込まれた事件(話がまとまった事件)のうち、85.8%で弁護士が関与しています。決着までにかかる時間は6ヶ月~2年以内が最も多く、全事件数の約78%になります。

相続財産の分配で、相続人の間では話し合い(遺産分割協議)がまとまらず、裁判所に決着してもらわなければならなくなり、多額の弁護士費用と長い月日をかけることになります。

遺言書の重要性が少し見えてきたでしょうか?

自分の築き上げた財産を推定相続人の誰に引き継がせたいのか。
不可分財産をどのように分配して欲しいのか。
一見公平に見えない分配方法を指定する理由はどんなことなのか。

亡くなった後では、思いは伝えられないのです。
だからこそ、元気なうちに遺言書を作成するという選択が重要なのです。

遺言作成の必要性

遺言書を作成しておくメリットは他にもあります。
当然のことながら、自分がいつ亡くなるかは誰にもわかりません。

自分の財産が「どこに」「どれくらい」あるか把握できていますか?

金融機関がいくつあって、預金残高がどれくらいあるか。
どこに不動産を所有していて、権利証はどこに保管してあるのか。
預金以外の金融資産はどんなものがあって、どこで保有しているのか。
どんな保険に加入していて、どんな場合に保険金が支払われるのか。
借入がいくらあって、返済はどうしているのか。

それらの情報を家族と共有できていますか?
自分が亡くなった後、家族は迷うことなく遺した財産の相続手続きに取りかかれますか?

自分の財産がどう管理されているかを記しておくことで、悲しみの中、遺された家族が途方に暮れることを防ぐことができるのです。

遺言執行者とは?

遺言書で「遺言執行者」を指定しておくこともできます。

遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現する人のことです。
単独で遺言内容を実現する権限を持ちます。相続人のうちの誰かを指定したり、司法書士などの資格者を指定することもできます。
遺言執行者は、個人でも法人でも指定することができます。

遺言作成を手伝ってもらった専門家に執行者になってもらうという選択もありです。部外者であり、専門家でもあるため、遺言内容を速やかに実現することができるでしょう。

遺言執行者を専門家などの親族以外の人を選任する場合、遺言者の死亡を確実に知らせることができるようにしておくことが必須です。

書いた遺言書はどうやって保管するの?

さて、遺言書の重要性がだいぶわかってきたところで、自書した遺言書はどうやって保管するのが望ましいのでしょうか。

基本的に自筆証書遺言は自分で保管することになります。
前述のとおり、せっかく作った遺言書も、見つけてもらわなければ意味がありません。
目につきやすい場所に保管しておくと、確かに見つけてもらえるかも知れませんが、紛失や破棄のリスクがあります。

一般的には、家の金庫や、仏壇、銀行の貸金庫で保管する人が多いのではないでしょうか。
大事なものが保管できて、かつ日常的には触らないような場所ですね。

実は遺言書は、封筒に入れても入れなくても、遺言者の自由です。封筒の封をするかどうかも遺言者の自由です。
しかし、改ざんや捏造のリスクを踏まえると、封筒に入れ、しっかりと封をしておくことをお勧めします。
封筒を見ただけで、それが遺言書であることがわかるようにしておきましょう。

遺言書

遺言書を書いたことを誰に伝えておけばいい?

遺言書の存在を知らせるべき相手は一体誰でしょう。

もし、遺言書の中で遺言執行者を選任しているのであれば、必ずその人には伝えておきましょう。
自分が亡くなったあとのことを任せられる人に伝えておくことが大切です。
例えば、遺言書の存在を親にしか話していなかった場合、自分より先に親が亡くなってしまったら存在を知る人がいなくなってしまいます。

そういった点も考慮して伝える相手を考えましょう。
もちろん、推定相続人全員に話しておくのも選択肢のひとつです。

自筆証書遺言は何度でも書き直すことができます。
円満相続が実現できるような内容が理想的ですね。

相続人以外にも財産を渡したい場合には、遺言に記載することでその思いを実現することもできます。
財産を渡す相手は、個人でも団体でも構いません。
渡したい財産を明記し、「〇〇に遺贈する」という文言を入れておきます。
どこかの慈善団体に寄付したい場合などは、やはり遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。
遺言者の思いをくみ取って、実現してくれる人を選びましょう。

自筆証書遺言書保管制度とは?

説明のとおり、自筆証書遺言は原則、遺言者が保管しなければなりません。

しかし、令和2年7月10日より「自筆証書遺言書保管制度」が始まり、法務局(遺言書保管所)で遺言書を保管してもらえるようになりました。

遺言書の保管申請は、①遺言者の住所地 ②遺言者の本籍地 ③遺言者の所有する不動産の所在地 のいずれかを担当する遺言書保管所(法務局)から選択することができます。
最も便利な場所を選びましょう。

では、「自筆証書遺言書保管制度」について詳しく説明していきます。

法務省の公式ページによれば、遺言書保管制度には以下のようなメリットがあります。

  1. 遺言書は法務局において適正に管理・保管される
  2. 相続開始後、家庭裁判所における検認が不要
  3. 相続開始後相続人等は、遺言書の閲覧、遺言書情報証明書等の交付請求ができる
  4. 通知が届く
    ・相続人等が閲覧や証明書の交付を受けると、他の相続人等全員に通知が届く
    ・遺言者があらかじめ指定した人(相続人、受遺者、遺言執行者等)に、遺言書が保管されている旨の通知が届く

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

遺言書は法務局において適正に管理・保管される

申請時に、遺言書保管官が民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかどうかのチェックをしてくれます。
自筆証書遺言は、民法968条に規定があります。前述していますが今一度確認してみましょう。

(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

【民法 第968条】

あくまでも「外形的なチェック」であり、全文自書されているか、氏名・日付が書かれているか、押印されているかなどの確認に留まります。
法務局では、遺言内容についての相談には応じていませんし、書かれた遺言書が有効かどうかの判断もしないため、作成には十分な注意が必要です。

遺言書は、長期間法務局に保管されます。
原本は遺言者の死亡後50年間、遺言書の画像データは150年間適正に保管してもらえます。

これにより、自筆証書遺言のデメリットでもあった「紛失」「破棄」「隠匿」「改ざん」などのリスクを回避することができます。

相続開始後、家庭裁判所における検認が不要

自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、手続きに使用する前に必ず家庭裁判所の「検認」を受けなければなりません。

(遺言書の検認)
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

【民法 第1004条】

検認とは、相続人に対し遺言の存在・内容を知らせること、内容を明確にすることで検認日以降の偽造変造を防止することを目的とした手続きです。
ただし、検認で遺言書の有効性を判断してもらえるわけではありません。

封のしてある遺言書を検認前に開封してしまうと罰則があるので、十分に注意が必要です。
自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を経た上で、「検認済証明書」とセットで各種手続きでの使用が可能となります。

検認の概要は家庭裁判所の公式サイトに詳細がありますのでご参照ください。

検認の申立てには、申立書の他に遺言者の一生涯の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などが必要になる上、申立てから検認までに数週間程度の時間がかかります(管轄の裁判所によります)。
検認の申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければならず、申立人は、期日に必ず家庭裁判所に出向かなければなりません。

このように、自筆証書遺言による相続では、まず初めに遺言書の「検認申立」を行わなければ、相続手続きを進めることができません。

2020年7月10日(令和2年)より、開始された制度として「自筆証書遺言書保管制度」があります。制度の詳細については、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に規定されています。

法務局の保管制度を利用すると、家庭裁判所での検認が不要になります。

(遺言書の検認の適用除外)
民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

【法務局における遺言書の保管等に関する法律 第11条】

相続開始後相続人等は、遺言書の閲覧、遺言書情報証明書等の交付請求ができる

「自筆証書遺言書保管制度」において相続人等ができる手続きは、①遺言書の閲覧 ②遺言書情報証明書の交付請求 ③遺言書保管事実証明書の交付請求です。

これらの手続きができるのは、相続人の他、受遺者(遺贈を受ける人)、遺言執行者、それらの親権者や後見人等の法定代理人です。これらの人をまとめて関係相続人等といいます。
この手続きは遺言者が亡くなった後(相続開始後)にしかできません。

遺言書の原本は、保管している法務局(遺言書保管所)でのみ閲覧することができます。これに対して、遺言書の画像データをモニターで閲覧するのは、全国どこの遺言書保管所でも可能です。

遺言書情報証明書とは、自筆証書遺言の内容を証明する書面です。

法務局に保管された遺言書の原本は遺言者が撤回する場合を除いて、返却されません(法務局で遺言者の死亡後50年間保管されます)。
よって、遺言書による各種相続手続きを進める場合には、この遺言書情報証明書を使用することになります。

遺言書情報証明書の交付請求には、検認の申立てと同様に遺言者の一生涯の戸籍や相続人の現在戸籍などが必要になります。
「検認が不要といっておきながら、結局同じように戸籍を集める手間がかかる!」そう思ってしまいますよね。

「遺言書の検認」では管轄の家庭裁判所は決まっており、申立人は必ず管轄の家庭裁判所に出向く必要があります。これに対し、法務局(遺言書保管所)では、遺言書をデータで管理しているため、遺言書情報証明書の交付請求は、全国どこの遺言書保管所でも受け付けてもらえます。さらに、遺言書情報証明書の交付請求は、郵送による請求も可能です。

通知が届く

せっかく遺言書を作成したのに、その存在を誰にも知られなければ意味がありません。遺言者が亡くなった後、遺言書が存在することを、相続人をはじめとする関係者全員が知ることもまた難しいです。

法務省の自筆証書遺言書保管制度のページでは、通知の目的を以下のように説明しています。

(通知の目的)
遺言書保管所では、遺言書を長期間適正に管理・保管しますが、本制度の最終的な目的は、遺言者死亡後、遺言者の相続人や遺言書に記載された受遺者等及び遺言執行者等(以下合わせて「関係相続人等」といいます。)において、閲覧や遺言書情報証明書を取得(以下「閲覧等」といいます。)していただき、遺言書の内容を知ってもらうことです。

生前、遺言書保管所に遺言書を預けていることを、遺言者が一部の相続人にのみ伝えている場合又は一切誰にも伝えていない場合、遺言者死亡後、全ての関係相続人等がその事実に気付くことは困難です。

そこで、一定の条件の下、遺言書保管所から、遺言書を保管していることをお知らせすることで、関係相続人等に手続を促すこととしています。

【法務省公式サイト】

通知には次の2種類があります。

相続人等が閲覧や証明書の交付を受けると、他の相続人等全員に通知が届く【関係遺言書保管通知】

関係相続人等が遺言書を閲覧又は遺言書情報証明書等の交付を受けた場合、他の関係相続人全員に遺言書が保管されている旨が通知されます。

事前に手続きをすることなく、関係相続人等が閲覧(または交付請求)をすることで法務局(遺言書保管官)が遺言者の死亡の事実を確認し、他の関係相続人等に通知してくれます。

関係相続人等のうち誰かが手続きをすることにより、その他すべての関係相続人等に遺言書の存在を知らせることができます。

注意すべきは、誰も手続きをしなかった場合、遺言者が死亡したとしても通知はされないという点です。

誰かが手続きすると通知が届く

遺言者があらかじめ指定した人(相続人、受遺者、遺言執行者等)に通知が届く【指定者通知】

法務局が遺言者の死亡の事実を確認した時に、通知対象者へ遺言書が保管されている旨が通知されます。

遺言者の死亡の事実の確認は戸籍担当部局との連携のほか、遺言書保管事実証明書または遺言書情報証明書の交付のタイミングも該当します。

通知対象者は、最大3名まで指定可能です。遺言書の存在を確実に知らせたい人を指定しましょう。
通知対象者は誰でも構いませんが、関係相続人等でなければ遺言書の閲覧、証明書の交付請求はできませんので注意が必要です。

「指定者通知」は、遺言者が希望した場合に限ります。
遺言書保管の申請時に、所定の書式で通知対象者を指定し、遺言書保管官と戸籍担当部局間での氏名、生年月日、本籍等の情報や死亡の事実に関する情報の取得、提供に同意することになります。

この通知で最も重要なのは、指定した対象者へ確実に通知が届くことです。記載事項に誤りがないように、住民票や登記情報などで情報を確認しておくことが望ましいです。
また、記載事項に変更があった場合は、忘れずに変更の届出をするようにしましょう。変更の届出は、どこの遺言書保管所でも可能であり、郵送による届出手続きも可能です。

予め指定した人に通知が届く

遺言書の保管制度を利用する際には、併せて、通知制度も利用しましょう。

具体的な手続きはどうする?

自筆証書遺言書保管制度の利用にあたって、具体的にどのような手続きが必要になるでしょうか。
遺言者と関係相続人等に分けて詳しく説明します。

遺言者の手続き

遺言書の保管の申請

1.遺言書を作成する
自筆証書遺言の作成については、専門家のチェックを受けることをおすすめします。記載内容に不足や不備があった場合、手続きには使えません。
法務局では、民法上の要件の不備や法務局の様式のルールが守られているかどうかの判断はしてもらえますが、遺言書の内容が法的に有効かどうか(手続きに利用可能かどうか)についての判断はしていません。

具体的には、全文自書されているか、押印があるか、日付が記載されているか、財産目録に署名押印があるか、訂正方法は適切か、サイズや余白のルールは守られているか、消えるインクで書かれていないか等を確認してもらえます。ひとつでも欠けている場合は、そのままでは保管制度を利用できません。


遺言書の作成は、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの専門家が対応可能です。
遺言書に記載したいと考えている財産に、不動産が含まれる場合は、司法書士に作成を依頼するのがおすすめです。
2.どこの法務局に保管するか選択する
保管の申請をする法務局は、以下のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)の中から選択可能です。
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地

【遺言書保管所一覧】


どこの法務局でもいい訳ではないので、注意してください。遺言者は保管の申請や保管申請の撤回の際、必ず出向く必要がありますので、自分が行ける最も便利な場所を選択するようにしましょう。
3.保管申請書を作成する
公式サイトに保管申請書の様式がありますので、記載例を参考に記入します。
法務局の窓口でも入手可能ですが、あらかじめ記入して持参するのがよいでしょう。

【保管申請書書式】
4.法務局の予約を取る
申請には予約が必須です。
WEBでの予約も可能であり、電話や直接窓口で予約をすることもできます。
わかりやすい予約方法を選択しましょう。
法務局の予約専用サイトなら24時間365日利用可能です。

【法務局手続案内予約サービス】
5.実際に法務局に行って保管の申請をする
申請は、遺言者本人でなければできません
代理人や郵送では受け付けてもらえないので注意しましょう。
予約した日時に、予約した遺言書保管所(法務局)へ出向きます。必要書類をひとつでも忘れると手続きができないため、忘れ物に注意してください。

≪持ち物≫
・遺言書(ホチキス留めや封筒は不要)
・保管申請書
・住民票の写し(本籍、筆頭者記載のもの。
        マイナンバー、住民票コードが記載されていないもの)
・写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
・手数料(1通につき3,900円)収入印紙
6.保管証を受け取る
遺言書、申請書、添付書類に不備がなく、手数料を納めると手続き完了となります。
手続きは即日完了し、保管証が発行されます。
保管証は再発行不可なので、紛失しないよう注意してください。
保管番号は、後の各種手続きに利用するため、通知制度と併せて、関係相続人等に知らせておくと便利です。

保管手続き完了後については、遺言者は次の手続きを取ることができます。
「預けてある遺言書の閲覧」
「遺言書保管申請の撤回」
「変更の届出」

遺言者は、遺言書保管所で保管されている遺言書の内容を確認することができます。
保管されている遺言書について、「保管の申請の撤回」をすることで、遺言書を返してもらうこともできます。
遺言者に、氏名、住所等の変更が生じた場合には、遺言書保管官に届け出る必要があるので、忘れずに行いましょう。

関係相続人等の手続き

手続きは、遺言者が亡くなった後にしかできません。また、手続きできるのは、関係相続人等です。
関係相続人とは、以下の人を指します。

  • 相続人
  • 受遺者等
  • 遺言執行者等
  • 上記の親権者
  • 上記の後見人等の法定代理人

遺言書保管事実証明書の交付請求

遺言書保管事実証明書で確認できることは、遺言書が保管されているかどうかということですが、自身の立場(被相続人との続柄)によって、確認できる遺言書が変わります。

①相続人の場合
 被相続人が遺言者として書いた遺言書が保管されているかどうか

②相続人ではない場合
 自分を受遺者、遺言執行者とした遺言書が保管されているかどうか

1.交付請求する遺言書保管所(法務局)を選択する
全国どこの遺言書保管所でも請求可能であり、郵送でも請求することができます。

【遺言書保管所一覧】
2.交付請求書を作成する
法務局の公式サイトからダウンロード可能です。記入例を参照しながら記入しましょう。
様式は最寄りの法務局窓口でも入手できます。

【交付請求書書式】
3.予約を取る(窓口で請求する場合)
交付請求には予約が必須です。
公式サイトの他、電話や窓口でも受け付けていますのでご都合の良い日時で予約しましょう。

【法務局手続案内予約サービス】
4.遺言書保管所で交付請求する(または郵送する)
予約した日時に遺言書保管所で手続きをします。
必要書類は以下の通りで、忘れ物があると手続きすることができませんので注意してください。
郵送で請求する場合は、必要書類一式と、住所を記載した返信用封筒(切手貼付)を遺言書保管所へ送付します。

≪必要書類≫
・交付請求書
・遺言書の死亡が確認できる書類(戸籍謄本、除籍謄本など)
・交付請求者の住民票
・(請求者が相続人の場合)相続人であることがわかる戸籍謄本
・(請求者が法人の場合)法人の代表者事項証明書(発行3ヶ月以内)
・(親権者、未成年後見人の場合)親権者であることが確認できる
 戸籍謄本(発行3ヶ月以内)
・(成年後見人等の場合)登記事項証明書(発行3ヶ月以内)
・写真付き身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
・手数料(1通につき800円)収入印紙
5.証明書を受け取る
窓口の場合はその場で受け取ることができます。
郵送請求の場合は、請求者の住民票上の住所(返信用封筒に記載の住所地)へ送付されます。

遺言書情報証明書の交付請求

遺言書情報証明書は遺言書の内容が全て印刷されています。
遺言書の原本については、法務局にて保管されるため、返却されることはありません。交付請求した「遺言書情報証明書」を各種手続きに使用することになります。

1.交付請求する遺言書保管所(法務局)を選択する
交付請求については、全国どこの遺言書保管所でも可能です。
郵送でも請求することができます。

【遺言書保管所一覧】
2.交付請求書を作成する
法務局の公式サイトからダウンロード可能です。記入例を参照しながら記入しましょう。
様式は最寄りの法務局窓口でも入手できます。

【交付請求書書式】
3.予約を取る(窓口で請求する場合)
交付請求には予約が必須です。
公式サイトのほか、電話や窓口でも受け付けていますのでご都合の良い日時で予約を取りましょう。

【法務局手続案内予約サービス】
4.遺言書保管所で交付請求する(または郵送する)
予約した日時に遺言書保管所で手続きを行います。
必要書類は以下のとおりで、忘れ物があると手続きすることができませんので注意してください。
郵送で請求する場合は、必要書類と併せて、住所を記載した返信用封用(切手貼付)を遺言書保管所へ郵送します。

≪必要書類≫
・交付請求書
・遺言者の一生涯分の戸籍類*
 (相続人が兄弟姉妹の場合や代襲相続、数次相続の場合は追加の戸籍が必要)
・相続人全員の戸籍謄本*
・相続人全員の住民票*
 *の書類に代えて法定相続情報一覧図(住所記載あり)でも可
 ※関係遺言書保管通知を受けた人は*印の書類は不要
・(請求者が受遺者、遺言執行者等の場合)請求者の住民票
・(請求者が法人の場合)法人の代表者事項証明書(発行3ヶ月以内)
・(親権者、未成年後見人の場合)親権者であることが確認できる
 戸籍謄本(発行3ヶ月以内)
・(成年後見人等の場合)登記事項証明書(発行3ヶ月以内)
・写真付き身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
・手数料(1通につき1400円)収入印紙
5.証明書を受け取る
窓口の場合はその場で受け取ることができます。
郵送請求の場合は、請求者の住民票上の住所(返信用封筒に記載の住所)へ送付されます。

※関係相続人等のうち、誰かが交付を受けると、関係相続人等のその他全員に対し、
 保管官により遺言書が保管されていることが通知されます。

遺言書の閲覧請求

遺言書の内容を、モニター(画像データ)、または、原本で確認することができます。
遺言書の原本は、保管している法務局でのみ閲覧可能です。
モニターによる閲覧については、全国の遺言書保管所でできます。どちらの閲覧を請求するかを選択することができます。

自筆証書遺言の閲覧
1.閲覧請求する遺言書保管所(法務局)を選択する
モニターによる閲覧は、全国どこの遺言書保管所でも請求可能です。

【遺言書保管所一覧】
2.閲覧請求書を作成する
法務局の公式サイトからダウンロード可能です。記入例を参照しながら記入しましょう。
様式は最寄りの法務局窓口でも入手できます。

【閲覧請求書書式】
3.予約を取る
閲覧請求には予約が必須です。
公式サイトのほか、電話や窓口でも受け付けていますので、都合の良い日時で予約しましょう。

【法務局手続案内予約サービス】
4.遺言書保管所で閲覧請求する
予約した日時に遺言書保管所で手続きをします。
必要書類は以下のとおりで、忘れ物があると手続きすることができませんので注意してください。

≪必要書類≫
・閲覧請求書
・遺言者の一生涯分の戸籍類*
 (相続人が兄弟姉妹の場合や代襲相続、数次相続の場合は追加の戸籍が必要)
・相続人全員の戸籍謄本*
・相続人全員の住民票*
 *の書類に代えて法定相続情報一覧図(住所記載あり)でも可
 ※関係遺言書保管通知を受けた人は*印の書類は不要
・(請求者が受遺者、遺言執行者等の場合)請求者の住民票
・(請求者が法人の場合)法人の代表者事項証明書(発行3ヶ月以内)
・(親権者、未成年後見人の場合)親権者であることが確認できる
 戸籍謄本(発行3ヶ月以内)
・(成年後見人等の場合)登記事項証明書(発行3ヶ月以内)
・写真付き身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
・手数料(モニター閲覧1回につき1400円、原本閲覧1回につき1700円)収入印紙
5.遺言書を閲覧する
遺言書保管所で、モニターによる閲覧、または、原本の閲覧を行うことができます。

※関係相続人等のうち誰かが閲覧することで、関係相続人等のその他全員に、
 保管官より遺言書が保管されていることが通知されます。

このように、遺言者はもちろんのこと、相続人、受遺者、遺言執行者といった関係相続人等は、単独で遺言書の内容を確認することができます。

遺言書の存在を知った上で、内容を確認したい場合には、閲覧を請求してみてもいいのではないでしょうか。

よくある質問

公正証書遺言と自筆証書遺言は、どちらがいいですか?

どちらの遺言も一長一短です。実現したい内容に応じた遺言書の作成を選択しましょう。

専門家としては、財産内容が多岐にわたり承継する相続人等が複数になる場合は公正証書をおすすめします。逆に、遺留分を有する相続人がいない(又は配偶者のみ)等遺産を分割せずに一人に承継させたい場合などは、自筆証書遺言の保管制度の利用を検討するのもよいでしょう。

通知をしたいと思っている人の住所が変わった場合は、保管した遺言書は無効になりますか?

遺言書が無効になることはありません。しかし、遺言者や指定通知対象者に住所などの変更があった場合は、「変更の届出」をする必要があります。変更の届出は全国どこの遺言書保管所でもできるほか、郵送でも受け付けてもらえます。相続開始後、円滑に手続きが進められるよう忘れずに変更の届出をしましょう。

郵送で遺言書情報証明書等の交付請求をする際、手数料はどうやって納めればいいですか?

必要になる手数料分の収入印紙を購入し、申請書に貼付して納付します。金種の指定はありませんので、合計で手数料額になるように購入してください。

収入印紙は郵便局や法務局で購入することができます。

法務局に保管した自筆証書遺言とは別に作成した公正証書遺言ではどちらの内容が優先されますか?

内容が矛盾する部分については、日付の新しいものが優先されます。自筆証書遺言か公正証書遺言かによって優劣はありません。新しい遺言を作成する場合は、前に作成した遺言を破棄するか、新しい遺言の中に「以前に作成した遺言書の内容は無効とする」旨を記載するとよいでしょう。

まとめ

自筆証書遺言は思い立ったらすぐに作成することができる遺言書です。最大のメリットは時間と費用が掛からないことです。

しかし、保管に気を使わないといけない点や発見してもらえないかもしれない点はデメリットでした。
そんなデメリットを回避する制度として令和2年にスタートした保管制度について解説しました。

自筆証書遺言書保管制度のポイント

  • 法務局で長期間適正に管理してもらえる
  • 家庭裁判所での検認が不要になる
  • 遺言書情報証明書は全国どこの遺言書保管所でも交付してもらえ、郵送による請求も可能
  • 遺言者の死亡の事実を確認すると、あらかじめ指定した人に通知が届く
  • 相続開始後、誰かが証明書の交付を受けると他の相続人等にも通知が届く

遺言書の形式については法務局でチェックを受けることができますが、内容の法的有効性についての判断はしてもらえません。せっかく法務局での保管制度を利用するのであれば、相続手続きを進める上で問題なく使用できる、しっかりした自筆証書遺言を作成しましょう。

自筆証書遺言の作成について、不安があったり、自信がない場合は、お近くの専門家に相談することをおすすめします。

遺言書の作成は、行政書士、司法書士、弁護士、税理士などが対応可能です。

特に、相続財産に不動産が含まれる場合は、司法書士に依頼するとよいでしょう。

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