相続登記が義務化されたことを知っていますか?申請義務を怠ると罰則もあります。
相続人として申請義務は果たしたいのに、一人ではできることに限界がある!
そんな歯がゆい思いをしていませんか?
民法等の改正で新設された「相続人申告登記」の最大の特徴は相続人が“単独で”比較的“容易に”義務を履行できる点です。
制度の趣旨から利用方法まで詳しく説明します。ぜひ最後まで読んでみてください。
相続人申告登記とは?
相続人申告登記とは、簡単に言うと法務局に対し「自分が“ひとまず”この不動産の所有者になった」ことを申告しておく制度です。
(相続人である旨の申出等)
前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
【不動産登記法 第76条の3】
制度新設の背景
相続が開始すると、被相続人(亡くなった人)の所有していた不動産は相続人全員の共有財産となります。
通常は、相続人の間で誰が何を引き継ぐかという遺産分割協議を経て、不動産を取得した相続人が名義変更(所有権移転)の登記をすることになります。
不動産を取得した相続人が、登記申請の義務を負うことになるのですが、この前提として「遺産分割協議が調っていること」が必要になります。
つまり、何らかの理由で協議がまとまらない場合、具体的に誰が不動産を取得するかが決まりません。この状態で長年所有者の名義を変更する登記がされず放置されたことで、現在、日本国内のいわゆる所有者不明土地が増え続けてしまいました。
これに歯止めをかけるべく、「相続登記の義務化」が始まるわけですが、それに伴い、より簡易的に相続人が義務を履行できる制度も取り入れられることになりました。 これが「相続人申告登記」です。
具体的な手続き方法
相続人申告登記は、相続人のうちの一人が単独ですることが可能です。
他の相続人の分を含めて代理で申し出ることもできます。 具体的な申告方法について簡単に説明します。
- 申告登記に必要な書類*を収集します
- 不動産を管轄する法務局(登記官)へ履行期間内(3年以内*)に必要事項を申し出ます
- 申出を受けた登記官が審査したうえで、相続人の住所氏名を職権で登記に付記する
*必要書類…申出人が所有権登記名義人(被相続人)の相続人であることがわかる戸籍謄本
*履行期間…相続開始と自分が不動産を取得したことを知った日から3年以内
法定相続人の範囲を特定する必要がないので、通常の相続登記のように被相続人の一生涯の戸籍を集める必要はありません。
また、法定相続分の割合の確定も不要です。
一般的な相続登記では、戸籍の収集だけでも大変な作業です。この収集作業の負担が軽減されることになります。 申告登記のあとで、分割協議がまとまった場合は、協議成立から3年以内に不動産を取得することとなった相続人が登記申請をする義務を負います。
併せて知っておきたい改正ポイント
令和8年4月1日、土地の所有者が死亡した事実などを登記官が住基ネットなどから取得し、不動産登記情報に符号によって表示する制度も新設さます。
(所有権の登記名義人についての符号の表示)
登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。
【不動産登記法 第76条の4】
登記情報を見ることで、不動産所有者の死亡の事実を確認することが可能になります。
これにより、事業用地の選定がより円滑になることが期待されています。なぜなら、死亡の有無を確認することで所有者の特定や交渉にコストがかかる地域を避けることができるようになるからです。
相続人申告登記に期待されること
不動産の権利の登記は義務ではありませんでした。
法改正後も、相続及び相続人に対する遺贈以外で不動産を取得した場合の登記は義務ではありません。
不動産は高額な取引になることが多いです。せっかく購入したマイホームを自分の名義にしていなかったために、トラブルに巻き込まれるなんてこともあり得ます。
だから、不動産購入時は必ず所有権登記名義人を購入者にするための申請をする訳ですが、相続においては、トラブルに巻き込まれるようなリスクは低く、放置されがちでした。
今回の相続登記義務化は、そうやって放置され、所有者が不明となった土地を解消すべく法律を改正するに至ったとはいえ、やはり一般人にとって登記申請は荷が重い作業となります。
相続の問題は、各家庭によって様々です。個々の相続人は申請義務を履行するつもりでも、なかなか思うように進まないこともあるでしょう。
そんな時に、より簡便に申請義務を履行できるようにと新設されたのが「相続人申告登記」です。
相続人として義務を履行しなければならない人にとっては、より簡単に手続きができ、法務局にとっては不動産の所有者に相続が発生したことと、どこの誰が相続人なのかを把握することができる、
そんな制度と言えます。 多様な相続事情によって、登記申請がされない不動産が増えないことが、この制度に期待されることではないでしょうか。
よくある質問
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相続登記を怠ると罰則があると聞きましたが、相続人申告登記をすれば罰則はなくなりますか?
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相続人の登記申請義務を履行したことになりますので、相続人申告登記をした相続人は罰則の対象にはなりません。
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相続人申告登記に必要な戸籍類はどのようなものですか?
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申出をする人が、所有権登記名義人(被相続人)の相続人であることが確認できる戸籍謄本を提出することで足ります。 被相続人との関係が遠くなると準備する戸籍の数は増えます。戸籍収集に困ったら、お気軽にお問い合わせください。必要な戸籍を迅速に収集します。
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相続人申告登記をした後に、遺産分割協議がまとまった場合はどうすればいいですか?
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遺産分割協議によって、不動産を取得することになった相続人が、分割協議の内容を反映した登記申請をする義務を負います。これは、分割協議がまとまってから3年以内という期限があります。
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相続人申告登記は相続人が単独でできると聞きましたが、一人がすれば相続人全員が罰則の対象ではなくなるのでしょうか。
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申出をした相続人のみが、登記申請義務を履行したことになります。その他の相続人は罰則の対象になります。また、相続人申告登記は、一人の相続人が複数の相続人の分を申し出ることが可能です。
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相続人申告登記を相続人のうち誰かがした場合、所有権はその相続人に移るのでしょうか?
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「相続が発生した旨」と「自分が相続人である旨」を付記するに留まりますので、単独で申告登記を申し出た相続人に所有権が移るわけではありません。
通常の遺産分割協議を経て、不動産を取得する相続人が相続登記をすることで所有権が移ります。
まとめ
相続登記義務化に伴い、新設された「相続人申告登記」についての解説でした。
不動産の登記申請という一般人にはなじみのない手続きをより簡易的にできるようにした制度です。
・不動産の所有者に相続が発生したこと
・その所有者の相続人であること
主にこの2点を申告することで、登記情報の権利部分に登記官が相続人情報を付記します。
相続登記をすぐに申請できない場合の対処方法として検討してみてはいかがでしょうか。
自分での手続きが困難と感じたり、面倒な場合は、お近くの司法書士へのご相談をお勧めします。
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