相続の手続きを進めるにあたり、多くの書類を収集する必要があります。その中に、「固定資産評価証明書」という書類があります。
土地、建物である固定資産に関する書類であることは想像できると思いますが、記載されている詳細についてまで詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回は、相続手続きを進める際に必要になる、「固定資産評価証明書」について解説したいと思います。 これから、相続手続きを進める人は参考にしてみてください。
固定資産とは
固定資産とは、土地、家屋、償却資産の総称で、下記のものが該当します。
〔土地〕 | 田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地) |
〔家屋〕 | 住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物 |
〔償却資産〕 | 構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、 法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。 ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除く。 |
毎年、1月1日に上記の固定資産を所有している人は、固定資産税を支払わなければなりません。
固定資産税とは
固定資産税は、土地、家屋、償却資産である、固定資産を所有している人にかかる地方税(市町村税)です。所有する固定資産のある住所地を管轄する市町村、東京都23区については東京都に支払います。
固定資産税の他に、都市計画事業または土地区画整理事業のための費用に充てる、目的税として課税される都市計画税もあります。
固定資産税の納付は、「1月1日現在、土地、家屋、償却資産の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている人」の義務となります。
納める税額については、次の計算式で算出することができます。
課税標準額×税率(1.4%(標準税率))=固定資産税額
土地及び家屋のそれぞれの課税標準額の合計×税率(0.15%)=都市計画税額
※税率は各市町村により条例で定めています。
課税標準額とは
固定資産税の税額を算出する際に、税率を掛ける対象となるものです。
原則として、固定資産課税台帳に登録された固定資産価格(評価額)が課税標準となります。
固定資産価格については、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価された額を、市町村長または知事が決定します。 固定資産価格(評価額)については、「固定資産税納税通知書」と一緒に送られてくる、「固定資産課税明細書」で確認することができます。
課税標準額は、相続登記においては、法務局に納める登録免許税算出の際の基準となります。
具体的な法務局に払う登録免許税は、課税標準額の0.4%となり、法定費用です。
固定資産税評価額とは
相続が発生すると、被相続人の財産である固定資産も相続の対象です。
固定資産課税台帳に登録された固定資産価格を調べることで、固定資産の財産額の目安とすることができます。
固定資産評価額は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて固定資産を評価し、各市町村長が個別に定める価格です。
土地の時価の約70%が固定資産税評価額の目安といわれています。
どんな場所にある土地であるか、面積、形状、道路とどのように接しているか等によっても、評価額は異なります。 建物については、新築時は請負工事金額の50~60%が目安といわれていますが、家の規模や構造、築年数などによっても評価額は異なります。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、土地、建物といった固定資産税の対象となる資産の、評価額を証明する書類です。
相続手続きにおいても、被相続人の所有していた不動産を、相続人が引き継ぐという手続きは多いのではないでしょうか。
令和6年4月より、法改正があり「相続登記の義務化」がはじまりました。
被相続人の遺した財産に、不動産がある場合には、相続人名義への変更手続き(相続登記)が必要となります。
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。 この手続きの際の提出書類として、「固定資産評価証明書」が必要になります。
名寄帳
名寄帳とは、固定資産税を課税するために市区町村が作成している固定資産税課税台帳を、所有者ごとにまとめたものです。
被相続人の所有しているすべての不動産を把握できない場合など、被相続人を所有者とする名寄帳を取得することで、すべての不動産を確認することができます。
固定資産評価証明書の取得方法
相続登記手続きを行う際に必要となる、「固定資産評価証明書」はどのようにして取得すればよいのでしょうか。
請求は、相続する不動産の所在地の市町村役場(東京23区については都税事務所)が窓口となります。
直接窓口に出向き申請することができますし、郵送による交付申請も可能です。
申請書は、市区町村ごとに異なりますので、事前に確認しましょう。申請書式は、各市町村役場ホームページからダウンロードすることもできます。
申請の際には、申請書に必要事項を記載し、その他に必要書類等を添付しなければなりません。
【提出書類】
- 固定資産評価証明書交付申請書
- 法定相続情報一覧図
- 被相続人が亡くなったことがわかる書類(住民票の除票、除籍謄本等)
※法定相続情報一覧図がないとき - 相続人の現在の戸籍謄本(抄本)
※法定相続情報一覧図がないとき - 発行手数料(郵送の場合は定額小為替)
- 返信用封筒 ※郵送の場合
- 本人確認書類 ※身分を証明できる官公署が発行した書類
固定資産評価証明書交付申請
固定資産評価証明書を取得する場合、不動産所在地の市区町村ごとの交付申請書が必要になります。 各市区町村役場の窓口でもらうことができますし、市区町村のホームページからダウンロードすることもできます。
固定資産評価証明書交付申請書の作成
以下で、千葉市の「税務証明交付申請書」を例に、申請書の記載についてみてみましょう。
申請書の準備ができたら、その他必要書類を添付し、各窓口に提出します。
交付には手数料が掛かります。
郵送で申請する場合は、手数料分の定額小為替を同封する必要がありますので、事前に確認して準備をしましょう。
固定資産評価証明書の取得年度には注意しよう
固定資産評価証明書は年度ごとに発行されます。
相続登記の際は、登記申請する年度の固定資産評価証明書が必要になりますので注意しましょう。
年度の切替えは、毎年4月1日となります。
登記申請が、4月1日以降になる場合は、固定資産評価証明書の交付申請も年度切替え後のものを取得する必要があります。
年度終わり、年度初めの相続登記手続では、使用する固定資産評価証明書の取得年度についても注意しましょう。
よくある質問
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相続登記では、評価額の証明に納税通知書でも大丈夫ですか?
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固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に添付されている「課税明細書」で確認することができますが、公的機関への許認可等においては、「固定資産評価証明書」が必要になる場合があります。相続登記においても、課税明細書では足りず、固定資産評価証明書が必要になります。
まとめ
相続手続きにおける、不動産の名義変更の際に、「固定資産評価証明書」の提出が必要となります。
固定資産の所在地を管轄する市区町村役場にて取得できる証明で、自分でも取得は可能な書類です。
本記事を参考に、ぜひ、自分で取得してみてください。